恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「どけどけっ」
回廊の先からどたどたと大きな足音が聞こえてきた。遅れてやってきた飛龍の側近や、兵士たちだ。
彼らは縄を持ってきていて、動きを止めていた侍女の手を打って刃物を落とし、縄で腕と体をひとまとめにして縛った。
「すぐ医師と薬師を呼べ。殺してはならん」
「御意」
飛龍の命令を受け、兵士たちは侍女を運んでいった。
「殿下、遅れて申し訳ありません。お怪我は」
髭を生やした側近が飛龍の前に跪く。
「大事ない」
飛龍は自らの袖を破き、口で布きれとなった袖の端を咥え、右手を使って器用に傷を縛りあげる。
「殿下……殿下、ごめんなさい。私のせいで」
涙をためて見上げる鳴鈴を、飛龍はそっと抱きしめた。もう、彼女の泣き顔は見たくなかった。