恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「大した傷じゃない。それよりお前が無事でよかった」
鳴鈴のぬくもりを感じる。それだけで、傷の痛みが癒されるような気がした。
ぎゅっと抱きついてくる鳴鈴を愛しく感じる。自由な右腕で、優しく彼女の震える背中を撫でた。
(呆れたやつだ……)
非力なくせに、侍女の命を救おうとして自分の身を投げ出すなんて。
そう思う飛龍も、気づけば体が動いていた。鳴鈴がいなければもう少しうまく立ち回れただろうが、無様なことになってしまった。
だが、鳴鈴を責める気持ちはまったく浮かんでこない。それより、彼女が無事だったことに心底ほっとしていた。
「殿下、麻香の箱の中にこんなものが」
ひとりの侍女が青い顔で近づいてきて、震える手で一枚の紙を差し出す。鳴鈴が顔を上げた。
「麻香の油を吸う紙の下に入っていたのです」
それを受け取った飛龍の眉間に深いシワが刻まれた。
【雪呪】と不気味な二文字だけが、そこに書かれていた。