恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
◇◇
飛龍の怪我の手当ての間、鳴鈴は彼の部屋に入れてもらえず、自室に閉じこもっていた。
傷口を縫うところを見たら鳴鈴が倒れてしまうかもしれないという飛龍の心遣いだったが、彼女にはそれが不満だった。
「殿下は大丈夫かしら。あのまま腕が動かなくなってしまったらどうしよう」
もう何度目になるかわからない独り言を繰り返し、部屋の中をぐるぐる歩き回る鳴鈴を、傍に控える緑礼がため息をついて見つめた。
鳴鈴は雨に濡れたので湯浴みをし、薄物一枚でうろうろしている。
外はもう暗い。雨が降っているからわかりにくいが、すっかり夕方になっている。
「そろそろ目を覚ましてください、お妃さま。もう星稜王殿下に仕えるのはやめにしましょう」
緑礼の言葉にぴたりと動きを止める鳴鈴。
「何を言っているの?」
零れ落ちそうな目で彼女は緑礼を見つめた。
飛龍に仕えるのをやめるとは、どういうことなのか。
「そのままの意味です。離縁してもらいましょう。そうしたら一度、出家するのです。女道士として一度俗世から離れれば、向家との縁はなかったことになります。そこから別の方に嫁ぐという道も……」