恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
それから七日後。
鳴鈴は泣きはらしたまぶたを侍女に冷やされ、いつもより大人っぽい化粧を施されて皇城へ赴いた。
いつもは素顔に近い状態でいることを好んでいた鳴鈴だが、今日ばかりはそうもいかない。
目の周りを黒く縁取り、目尻を薄紅色に染めた。真紅の口紅が小さな唇を花びらのように彩る。
馬蹄のような形の元宝髻(ゲンポウケイ)に結った髪には金と翡翠が連なった飾りを巻き付け、お揃いの耳飾りを付けた。
薄紫色の襦裙には花と蝶が刺繍されている。上着は白地に緑と紫色の異国風の模様。襦裙より薄い色の被帛(ヒハク)を腕に引っかけ、鳴鈴は重陽節の宴が催される宮殿へ参じた。
皇城のなかにはいくつも宮殿があり、今回は大きな池のある見事な庭に面した宮殿に皇帝と妃たち、皇子や公主たち、その他の招待客が集まった。
庭に咲き誇る菊は素晴らしいものだった。普段から見る黄色いものだけではなく、白や桃色、紅色や橙、紫といった、色とりどりの菊が絶妙な配置をされている。
宴席は皇族と貴族に分けられていた。池の中央にある、屋根と柱だけで壁はない開放的な亭には皇帝と妃たち。ほとりの南の亭に皇族、北の亭に貴族。
北の亭で周りを見ると、同じ年頃の娘が何人かいる。皆育ちが良さそうで、上等な襦裙を着ていた。