恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「どうしてだ、飛龍。今回のことは誠に残念であった。しかし、新たな妃を迎え、子を作り、この王朝をもっと繁栄させてくれ」
悲しむ皇帝に、飛龍は疲れ果てた顔で呟いた。
「私には向いておりません」
雪花を亡くしたばかりで新たな妃など、到底考えられなかった。皇太子は次期皇帝となる身。子を多く残さなくては話にならない。
(その妃は、きっとまた誰かに狙われる。それは耐えられない。もう二度と、自分のせいで悲劇を起こしてはならない)
飛龍はなにより、権力争いの第一線から一刻も早く逃れたかった。
皇帝は惜しみながらも、仕方なく飛龍を星稜王に封じ、東宮で仕えていた侍女や側近たちと一緒に、誰も行きたがらなかった北の地に赴かせた。
それからも飛龍は何度か他国との戦や内乱の鎮圧にかりだされた。その度、負けはしないけれども、余計な事まではしないように気を付けてきた。
(武勲を立てすぎると、またろくでもないことになる)
それまでの、まるで空を飛翔する龍のようだった彼の活躍は見られなくなった。
まるで重い鉄の足かせを付けられてしまったようだと、昔の飛龍を知る人間は、主に襲いかかった不幸を嘆いた。