恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
飛龍が逃がしたという梁家の人間の苦労を思うと、鳴鈴はまた苦しくなった。
「権力争いの線が、一番強いと俺は思っている。この前、また武勲を立ててしまったから」
古斑との戦いで、飛龍は勝利を収めた。侵攻して来ようとした敵軍を追い払っただけだが、皇帝はご満悦で、美女二十人を飛龍に下賜しようとしたほどだ。
(じゃあ、身内が……?)
歴史的には日常的に繰り返されてきた身内同士の諍いが、自分の身に降りかかってきたと思うと、鳴鈴の気持ちは重く沈む。
できれば飛龍には兄弟のみんなと仲良くしてほしい。憎み合うのは辛すぎる。
黙っていると、抱かれていた肩をぽんぽんと叩かれた。
「それに、こんなに若くて可愛らしい妃をもらってしまったからな。誰かが俺を羨んで逆恨みしていたとしても不思議はない」
「えっ?」
思わず顔を上げてしまうと、飛龍の微かな微笑みと視線がぶつかる。暗闇に慣れた目に、それは眩しすぎた。
「そ、それは私のことですか?」
マヌケな質問に、飛龍は苦笑した。
「お前以外に誰がいる」
破壊力抜群の微笑みに、鳴鈴は胸を撃ち抜かれた。
(可愛らしいなどと、初めて言われた……)