恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

「なんだというのだ。そこで申してみよ」

「はっ。恐れながら申し上げます。明朝すぐ、皇城に出向くようにとの主上のご命令でございます」

皇帝の命令と聞き、飛龍は深くため息をつく。

「この前花朝節の宴で参内したばかりではないか。今度はいったいなんの用があるのだ」

完全に戸の方を向いてしまった飛龍の目を盗み、鳴鈴は衣の前を合わせる。まだ何も脱いでいない飛龍の前で自分だけ素肌をさらしているのが恥ずかしかったからだ。

「翠蝶徳妃さまが賊に襲われ、お怪我をされたそうで」

「なんだと」

飛龍は立ち上がり、牀榻から降りた。

「徳妃さまは無事なの?」

翠蝶徳妃まで襲われたと聞けば、鳴鈴も黙って傍観してはいられない。

「ええ、命に別状はないとか……詳しいことを話したい故、なるべく早く参内するようにと」

「……わかった。少しだけ待ってくれ。すぐ準備に取りかかろう」

返事を終えた飛龍は、眉を下げた顔で牀榻の方へ振り返った。

「申し訳ないな。せっかく待ち焦がれた夜を迎えたというのに」

「いいえ! 謝らないでください。私は大丈夫です。殿下が私を想ってくれているとわかったので、いつまでも待てます」

< 153 / 249 >

この作品をシェア

pagetop