恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「鳴鈴やあなたを狙ったのも、その下手人だそうよ。その件で主上が話をしようとあなたを呼んだの」
そこまで言うと、まるでちょうどいい瞬間を狙ったように部屋の戸が叩かれた。
「星稜王殿下、徐妃さま。主上の準備が整いました故、移動をお願いいたします」
鳴鈴は無意識にごくりと唾を飲み込んだ。
「私も? 私は徳妃さまに付き添っていてはいけませんか?」
下手人が誰かということは当然気になるが、徳妃をひとりにしていくのも心配だ。
つきっきりで侍医や侍女がついているとしても、彼らは淡々と仕事をするだけで、翠蝶の心に寄り添うことはない。
賊に矢を射られて怪我をするなんて、どれほど怖かったことだろう。鳴鈴は自分が川に落ちた時の恐怖を思い出して震えた。
「お前も当事者だし、父上の命令に逆らわない方がいい」
この国では皇帝の命令は絶対。何人たりとも逆らうことは許されない。
「いいのよ、いってらっしゃい鳴鈴」
「徳妃さま、よろしければ後で笛を演奏しても?」
「楽しみにしているわ。あなたの笛は心が休まるの」
微笑んだ徳妃にこくりとうなずき、鳴鈴は飛龍のあとについて部屋を出た。