恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「俺は命からがら追手から逃げ、盗賊となった。それ以外に生きていく術がなかった」
梁家の者と知られてはいけない。しかしそれ以外の名を証明する手立てをもたなかった者たちは、耕す畑を借りることもできず、どの貴族の屋敷や商店でも雇ってもらうことは容易ではなかった。
飛龍が他国へ逃がした者たちは、飛龍が密かに手を尽くしたので何とか農民に化けて暮らしているはずだったが、彼の手から余った者たちは、野たれ死ぬか、盗みを働くしかなかったのか。
鳴鈴はどくどくと胸が不吉な鼓動を打つのを感じた。
(殿下が梁家の者を逃がしたと主上に知られたら……)
そうなれば、飛龍もただではすまない。しかし梁馬仁は、他の生き残りが他国に逃げたことを知らないようだった。
「その娘を最初に狙ったのは、単に金と人身売買目当てだった。しかしその時にお前に再会し、十年前の怨念が甦った」
飛龍は馬仁の怒声に打たれ、黙って彼を見つめていた。
「雪花さまを忘れ、新しい妃を迎え、武勲を立てて皇帝に可愛がられている……そんな呑気なお前に罰を与えてやろうとしたのさ」
だから、鳴鈴を刺そうとしたり、菓子に毒を混ぜたり、ふたりの結婚をお膳立てした翠蝶徳妃まで襲ったのか。