恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「どうしてあのとき、ご主人さまを止めてくれなかった。お前があの皇太子と雪花さまを取りあったりしなければ。ご主人さまより先に、お前が皇太子に罰を与えてくれていれば……!」
雪花の父が宿鵬を殺してしまったばかりに、梁家が殲滅されることになった。
笑みを消し、泣くように叫ぶ馬仁の声が、広間じゅうに響く。
(梁家の悲しみは、十年経っても……ううん、たった十年で消えるわけがない)
怒りよりも悲しみが、鳴鈴の胸を浸食していく。
「でも、殿下は雪花さんを忘れたりしていない」
ぽつりと呟いた鳴鈴の声に、馬仁が閉じていた目を開けた。
「殿下はずっと、雪花さんを失ったことを悲しみ、悔やんできた。だから十年ずっと、妃を娶らなかったの。妃が権力争いで傷つくのを恐れて……」
「やめろ」
飛龍が馬仁から刃を離し、静かに鞘に納める。切れ長の瞳が鳴鈴を睨んでいた。
「殿下は何も悪くない。ただ雪花さんを愛し、国のために戦っていただけよ」
「鳴鈴、もういい」
「お願いだから、もうこれ以上殿下を苦しめないで……!」
涙目になった鳴鈴を、飛龍が黙らせるようにぎゅっと抱きしめた。