恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「……なるほど、そういう恨みを持っていたのか」
皇帝が声を発すると、全員が黙ってそちらを見つめた。
「梁家の者は、生きてはいられない。皇族殺しの罪を負っているのだから」
「陛下、今少しの温情を……」
武皇后が口を挟むが、皇帝は首を横に振った。
「例外はない。この者だけ助けるわけにはいかない」
皇帝が立ち上がり、「連れていけ」と指示する。兵士たちに引きずられながら、馬仁は叫んだ。
「皇后さま! お助けください、皇后さま!」
梁家の悲劇に関わっていない武皇后に助けを求める馬仁。しかし武皇后は、悲し気に目を伏せるだけだった。
「あの者は、詳しい調査をしたのち、公開処刑する」
冷徹な皇帝の声が響く。
(そんな。なんとかして助けられないの?)
殲滅されたはずの梁家の生き残り。しかも、強盗を繰り返し、皇族を次々に襲ってしまった。
普通に考えれば死刑は当然だが、鳴鈴は馬仁に同情を覚えずにはいられない。彼もきっと、これまで地獄のような苦しみを味わってきたはずだ。
なにか言おうとした鳴鈴を、飛龍はより強く抱きしめた。
「こらえろ。こらえてくれ」
耳元で囁かれ、鳴鈴は脱力する。ここで彼女が皇帝の命に抗弁すれば、今度は星稜王府や徐家が害を被るかもしれない。
自分を止めてくれたことに感謝しつつ、鳴鈴は飛龍を抱き返した。彼の体から迸る悲しみを感じ、胸が痛かった。