恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
重苦しい雰囲気の広間から出たあと、飛龍は皇城の西にある宮殿に借りた部屋に閉じこもってしまった。
「しばらくひとりにしてくれ」
飛龍としては妃に情けない顔を見せたくないのだろうが、鳴鈴としては少し寂しいし、心配でもある。
一連の事件の下手人が、まさか梁家の生き残りとは。
飛龍もまったく疑わなかったわけではないが、そう思いたくはなかったのだろう。彼らはどこかで必死に、まっとうに生き延びてくれている……そう信じたかったに違いない。
鳴鈴は後宮で控えていた緑礼を伴い、翠蝶徳妃の部屋に戻った。
「……おかえりなさい。どうだった? 下手人は何か話した?」
鳴鈴の顔を見るなり、心配そうに尋ねてきた徳妃。鳴鈴は笑顔を作ることができず、ただうなずく。
そして広間であったことを話すと、みるみるうちに徳妃の表情が曇った。
「そう。あなたは雪花さんのことを知っていたのね」
「つい先日、殿下からお話を……」
傍に跪く鳴鈴を、徳妃は悲し気な顔で見つめた。
「あなたにとっても辛い話だったわね。ごめんなさい。きっと傷ついてしまうとわかっていても、私はあなたに飛龍に嫁いでほしかった」