恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「徳妃さま……」
「ひとめ会って、あなたが優しい子だってわかったのよ。あなたなら、きっと飛龍の悲しみに寄り添ってくれると思った。飛龍の傷だらけの心を癒してくれるんじゃないかって……」
祈るような翠蝶徳妃の声に、鳴鈴は申し訳なくなる。
「謝らないでください。私は殿下に嫁いで、とっても幸せです。でも」
「でも?」
「私じゃ、お役に立てないみたいです。殿下の心を癒すことなんて、とても……」
その証拠に、こんなときに距離を置かれてしまった。
(殿下は優しいから、気を使っているだけなのかも)
愛していると言ってくれた。可愛いとも。
でもそれは、処女妻だというせいで周りに妃扱いしてもらえない鳴鈴に対する気づかいだったのかもしれない。
そう思うと、鳴鈴の胸は張り裂けそうになる。
(抱こうとしてくれたのも、夫としての務めを果たそうとしただけじゃ……)
なんとか振り向いてほしかった。でも彼の心には、本当に愛した女性がいた。
侍女の意地悪な言葉に傷ついて泣いた。飛龍の優しさに舞い上がり、愛されている気がしていた。
(私はずっと自分のことばかりで、殿下の悲しみに気づけなかった)