恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「そんなことも考えず、お妃さまを庇った。あの時初めて私は、殿下を信用するようになったのです」
泣いてはいけない。今の自分に泣く権利などない。そう思っているのに、鳴鈴の目に涙がにじむ。
「最初は、若い妃を処女妻のままにしておくなんて、なんという情なしかと思っていました。本気で実家に帰った方がいいと、私はもう、毎日イライラして……」
歯に衣着せぬ緑礼の言葉に、翠蝶徳妃がくすりと笑った。
「飛龍にも、過去を清算する時間が必要だったのね。あなたも辛かったのはたしかなんだから、自分を責めなくてもいい」
「はい……」
「これからは二人で、幸せになってちょうだい。あなたたちなら大丈夫よ」
優しい徳妃の声に誘発された涙が一粒、鳴鈴の目から零れ落ちた。彼女はそれを手でぬぐい、今度こそ笑顔を作った。