恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜


**

出された食事にも手をつけず、飛龍はただぼんやりとしていた。

馬仁という名前を必死に記憶の中から検索すると、彼は雪花の遠い親戚だったということを思い出した。

(助けられなかった……)

雪花も、彼女の父も、多くの梁家の人々を無残に殺されてしまった。

その時の光景が悪夢のようによみがえり、飛龍を襲う。吐き気をこらえ、くしゃくしゃと頭を掻いた。

(彼らが死んだのは、俺のせいだ)

それなのに自分はまだ、皇族として生きている。手を差し伸べられなかった馬仁が自分を憎むのは当然だろう。

出家するのもいいな、と飛龍は考えていた。

この世と縁を切り、もう誰も傷つけずに生きていけたら。

(しかし、鳴鈴はどうする?)

飛龍の過去を知っても、変わらずに尽くしてくれる鳴鈴のことを思うと、やはりそれはできない。

彼女はまだ処女妻。次の嫁ぎ先はいくらでもあるだろう。弟皇子に下賜するという手もある。

だが誰より飛龍の心がそれを拒否していた。鳴鈴を離したくはない。誰にもやりたくない。

現実逃避をやめ、飛龍はため息をついた。その時、部屋の戸が遠慮がちに叩かれた。

< 167 / 249 >

この作品をシェア

pagetop