恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「そんなことがあるか。俺は一度皇太子の位を返上している。再度立太子されることも、長兄が廃太子されることもないはず」
円卓に乗りだして力説する宇春に、飛龍は淡々と言い返す。
鳴鈴は黙って考え込んでいた。
皇帝はたしかに、飛龍を気に入っているようだ。しかし、だからといってわざわざ今の皇太子を廃し、一度退位した飛龍を再度皇太子に据えるだろうか?
「そんなこと断言できるもんか。二兄、用心してくださいよ。今後もあまり手柄を立てすぎると、今度は『星稜王は謀反を企てている』とか、根も葉もない噂を立てられますよ」
ムキになって言う李翔に、飛龍は「もう結構だ」と言うように手のひらを前に出した。
「警告、ありがたく受け取っておく。お前もあまり大きな声で噂話をしていると、心配している被害がお前自身に降りかかるぞ。可愛い妃のためにも自重することだ」
皇族の身内争いは、歴史上何度も当然のように繰り返されてきた。飛龍も李翔が言うようなことを一度は考えているはずだ。
「わかってくれればいいです」
たしなめられた李翔は、おとなしく引き下がった。