恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
次の日。
廊下を走るバタバタという音で、飛龍は手紙を書く手を止めた。
「星稜王殿下!」
「なにごとだ。入れ」
慌てた様子で入ってきたのは、飛龍の側近だった。彼のただごとではない様子に、部屋の空気が張り詰める。
兵士は荒い息を整えつつ、ごくりと唾を飲み込んで言った。
「馬仁が……死にました」
「えっ!」
思わず声を上げてしまった鳴鈴。飛龍は黙って立ち上がる。
「どうして?」
「拷問に耐えかねたのだろうと。朝、毒を飲んで自害しているのが見つかりました」
「バカな」
毒を飲んで自害などと、手足を縛られて自由を失っている馬仁がどのようにして成し遂げたのか。
鳴鈴も立ち上がり、側近に詰め寄った。
「どうして彼が毒なんか飲めるの」
「さ、さあ。詳しいことは調査中のようです」
側近が言い終わらないうちに、飛龍が部屋の外へ出ていく。
「殿下、どちらへ」
「決まっている。牢だ」
馬仁が捕えられていた牢へ向かい、自ら現場や遺体を確かめようというのか。
想像しただけで怖くて震える。そんな鳴鈴の代わりに、側近が飛龍を止めようと声をかける。