恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
皇帝は飛龍の言うことなら、素直に耳を傾けてくれるようだ。そして、皇太子に対しては言葉を濁した。家臣や武皇后の前で、戦に関しては皇太子より飛龍の方が優れているとは言えないのだろう。
皇太子は武皇后に大事に育てられた優れ者ではあるが、実戦の経験が少ない。なにより武皇后が彼の出陣を嫌うという噂もある。
彼は飛龍と皇帝のやりとりを、無言かつ真顔で聞いていた。
(どうか、出陣などしないで)
鳴鈴は祈るように飛龍の背中を見つめる。
「星稜の兵であれば、私もうまく扱えるでしょう。どうしても私が行かねばならぬのなら、星稜の兵がこちらに到着するまでお待ちいただきたい」
「ううむ……兵は迅速でなければならん。やはり皇太子に……」
「それがいいですよ! 俺が皇太子殿下の補佐に回ります」
それまで黙っていた李翔が声を上げる。彼は武勲を立てたがっている。まだ若く、飛龍より功名心があった。
「いいえ、皇太子は皇都を出ることはできません」
ざわざわとしていた広間が静まり返る。声を発したのは、それまで黙っていた武皇后だった。
「皇太子は自分の罪を償わなければ」
「どういうことだ?」
皇帝が眉間にシワを寄せてたずねる。