恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
(どうして殿下が行かなきゃならないの?)
鍾平で起きる問題は鍾平で解決すべきだ。星稜が古斑の脅威にさらされる時、誰が他に立ち上がってくれよう。そのときは飛龍自ら赴くしかない。不公平だ。
鍾平でも城主が城を開けるのは不安だろうが、そこから調査隊を出し、本当に敵が攻めてきたら、そのとき迎え撃てばいい。
第四皇子や李翔が未熟だとしても、いつまでも飛龍に頼ってばかりでは成長しない。皇太子もそうだ。城内に籠ってばかりでは、いつまでたっても飛龍より高い評価はつけられない。
それでも、皇帝の決定を覆せる者はここにはいない。あまりの理不尽さに、鳴鈴はめまいを覚えた。
「……わかりました。しかし、準備もありますので一晩だけ猶予をいただきたい」
「それでも星稜から兵を呼ぶよりは早いか。よし、明朝まで時間をやろう」
飛龍の要求を、皇帝はしぶしぶ飲んだ。そのまま皇帝の側近である軍師を呼び、飛龍についていく兵士の選定に入る。
その間、鳴鈴は奥に下がるように命じられた。その場に残った女性は武皇后だけとなる。
「お妃さま」
扉の前で、緑礼が待っていた。鳴鈴は幼い頃から知るその顔を見た途端、くしゃりと顔を歪めた。
「緑礼、どうしよう。殿下が……」
「星稜王殿下がどうなされたのです?」
「殿下が、また戦に行かなくてはならないんですって」
鳴鈴は寄り添った緑礼の両手を握る。そうしていないと、立っていられなくなりそうだった。