恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

◇◇


鍾平王の情報に基づき、飛龍隊が通ったと思われる山中に入った鳴鈴たちは、馬に踏まれた跡のある草木を辿っていく。

「なかなか厳しいな」

早く前に進もうと思っても、整備されていないけものみちに蹄を取られてしまう。

それでもできるだけ急いで進んでいると、先頭の李翔の馬が足を止めてしまった。後ろに乗った鳴鈴は焦る。

「どうしたんでしょうか。お腹でも空いた?」

「疲れたのかな」

李翔が馬から降り、その大きな頬を撫でる。鳴鈴が裏からのぞきこむと、馬は優しい目に少しの怯えの色を映しているように見えた。

「……ん」

不意に李翔が顔を上げ、辺りを見回すような仕草を見せた。ふんふんと鼻を鳴らした彼が、眉をひそめる。

「血の匂いがする」

ぼそりと呟いた言葉に、鳴鈴は戦慄した。

「急ごう」

李翔が跨ると、なだめられた馬はなんとかゆっくりと前に進みだした。すると程なく、信じられない光景に出会った。

「これは……!」

李翔と鳴鈴は思わず口元を押さえた。草むらの中に、五人の遺体がばらばらに転がっていた。

「皇城の兵だ」

遺体が着ている甲冑は、皇城の兵士が着ているものに間違いない。では、この兵士たちを殺したのは……。

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