恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「ええ。必ず、一緒に王府に帰りましょう。だからあなたもこれ以上何も考えず、養生してちょうだい」
側近は泣きながらうなずく。運ばれていく彼を見送りながら、李翔が腕を組んで考え込んだ。
「ここで兵士たちが一斉に弓を引き、二兄たちを襲った。二兄は側近に庇われ、先に城へ戻ろうとした」
だとすると、先に出会った遺体は、城に帰ろうとした飛龍を襲って返り討ちにされたのか。
「飛龍さまは、どこに……」
「さっきの場所に戻ってみよう」
あの近くに傷を負った飛龍が倒れているかもしれない。鳴鈴たちは急いで元の場所に戻り、深い草を分けて辺りを探した。
「飛龍さま、どこです?」
名前を呼んでも返事はない。
ふたりの声が掠れ、出てこなくなったころ、李翔が再び呼子を取りだした。
「二兄も、これくらい持っているはずだ」
李翔が思い切りそれを吹き鳴らす。しかし、いくら待っても笛の音は帰ってこない。
「くそ! どこへ行っちまったんだ!」
足元がよく見えなくなってきて、鳴鈴は目をこすった。上を見上げると、日が傾いて空が橙色に染まっていた。
このままでは夜になってしまう。早く見つけなければ。