恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
(どうしよう。なにかいい手は……)
胸に手を当てて考える鳴鈴の脳裏に、ふと宇春の顔が浮かんだ。
『星稜王殿下は鳴鈴の愛の力がなければ、きっと救えない。そんな気がします』
そんなバカな。首を振った鳴鈴は、背中に当たる固い物に思い当たる。
胸の前で縛られた紐を解き、背中に括っておいた横笛を持つ。
(飛龍さまは、この笛の音をお気に召してくれていた)
他に何も誇れることのない鳴鈴だが、笛の腕前だけは少し自信があった。
呼子のように高い音ではない。けれど鳴鈴は吹き口に唇を当てた。
きっと、飛龍に届くと信じて。
瞳を閉じ、ただ飛龍を想って息を吹き込む。
幼いころから幾度となく練習してきた曲に誘われ、飛龍との思い出が鳴鈴のまぶたの裏によみがえった。
始まりは鳴鈴の一目惚れだった。たった一瞬で、危機から救ってくれた飛龍に恋をした。
優しい人だろうと思っていたのに、再会してもにこりともしてくれなかった。花嫁姿に何も言ってくれず、初夜に拒否されたときは、彼の背中を濡らして泣いた。
(飛龍さま、飛龍さま……)