恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
その日から七日ほどして、悪い知らせが届いた。
「出陣命令?」
鳴鈴は目を丸くした。
「古斑の兵が国境近くをうろついているというから詳しく調べたら、どうやらその辺りに軍隊が集結しているらしい。攻め込まれる危険がある」
大した事ではなさそうに、さらりと言う飛龍。彼の執政室に呼ばれたので何かと思ったら、そのような報告。不安な表情を隠さない鳴鈴に、飛龍は冷静に告げる。
「というわけで、主上の勅命により、古斑に出陣してくる」
「そんな、『ちょっと狩りに行ってくる』くらいの声色で言わないでくださいよ」
全然緊張感が伝わってこない。それくらい、飛龍にとって戦に出ることは普通のことなのか。
最初の頃よりだいぶ打ち解けてきたが、まだ飛龍のことがつかみきれない鳴鈴だった。
「俺は真剣だ。忙しくなるから、しばらく遊んでやれない。悪いな」
まるで娘に対する父親のセリフだ。不満を覚えたが、それはすぐに不安に変わっていく。
(殿下は本当に、私のことを娘か妹くらいに思っているのかも……)
言わずもがな、鳴鈴はまだ処女妻のままだった。