恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
しかし今はそこで悩んでいる場合ではない。夫が出陣してしまう。
もし愛しい彼に何かあったら。悪い想像が勝手に膨らんでいく。
鳴鈴の不安を見抜いたように、飛龍は椅子から立ち上がり、鳴鈴の頭をなでた。
「大丈夫だ。古斑軍は必ず国境で食い止める。ここまで被害が及ぶことはない」
どうやら、夫は鳴鈴の不安を捉え違えているようだ。自分の身に及ぶ害より、飛龍が無事に帰ってきてくれるかどうかを案じているというのに。
しかし鳴鈴は黙ってうなずいた。自分の思いが飛龍の負担になってはいけないと思ったからだ。
(武将の妃になるって、こういうことなのね……)
東西南北を別の国に囲まれている崔は、いつどの国から攻められてもおかしくない。親王たちは自分の領地以外で戦があっても、皇帝の勅命があれば出陣しなくてはならない。
他の武将の妻たちは、どんな気持ちで毎日を過ごしてきたのだろう。戦になってもどんと構え、笑顔で送りだしているのだろうか。鳴鈴はため息をついた。
(私には、できそうにない……)