恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「そうだ、お前にこれを渡そうと思って持ってきたんだ」
その場をとりなすように、飛龍がごそごそと懐から何かを取りだす。差し出されたのは、花の形をした銅鏡だった。
青銅に銀を貼り、琥珀で龍や花の模様が描かれている。龍に抱かれて守られるように、中央に立体的な鈴が接着されていた。
鳴鈴は自分の手のひらほどの大きさのそれを見つめる。
「私と殿下ですわね」
飛龍と鳴鈴。その名前から一文字とった物体を無理に彫らせたのは明白だった。普通は無機的な模様や草花、小動物の模様が多い。龍と鈴が同居した鏡は、おそらくこの世にひとつだけ。
「……職人に細かい模様を指定しなかったら、そうなってしまった。もっと可愛いウサギやクジャクにすればよかったんだが」
後悔しているように飛龍がため息をつく。
「どうして? 私、とっても気に入りました。殿下と私がいつも傍にいるみたい」
両手で鏡を持ち上げ、くるくると回る鳴鈴を、飛龍は安堵の表情で眺めた。
「そうか。よかった」
「ありがとうございます、殿下」
「いや……」
飛龍は照れたように、微妙な返答をしたまま口を閉ざしてしまう。また沈黙が落ちた。
なにか言わなければならないような気がして、鳴鈴は必死に言葉を探る。