恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「……いよいよ明日、出陣ですね。御武運をお祈りいたします」
「ああ」
「どうかご無事で……。寄り道なんてしないで、帰ってきてくださいませ」
どう気をつけても、寂しさや不安が顔に出てしまう。それを見られないように、鳴鈴は勇気を出して飛龍の胸に寄り添った。
「承知した。さっさと片付けて帰ってくる。だから、心配するな」
やはり娘に言い聞かせるような言い方が気になるが、それは一種の被害妄想かもしれない。
鳴鈴はそう解釈し、飛龍の背中に手を伸ばし、ぎゅっと抱きついた。
飛龍は「よしよし」と頭を撫でてくれた。
「そうだ、鏡のお返しに、笛でもいかがですか?」
「笛? いらん。俺は楽器はやらない」
顔を上げた鳴鈴は、飛龍が尺を吹いているところを想像して吹き出しそうになった。
「いえそうでなくて、私が吹きますので、殿下は聞いていてください」
体を放し、横笛を持ってくる。その間に飛龍は椅子に座っていた。
「そう言えば、義母がお前の横笛は素晴らしいと絶賛していた」
「それほどのものではありませんが、出陣前の殿下のお心を和ませることができたら本望です」