恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「お妃さま!」
背後で勢いよく扉が開けられ、びくりと身を震わせた鳴鈴。慌てて箱の蓋を閉じ、牀榻の下に押し込んだ。
「どうしたんですか、座り込んで」
入ってきたのは緑礼だった。振り返ると、彼女は肩で息をしていた。
「なんでもないわ。牀榻の下を掃除していたの」
「ああ……早く、立ち上がって。お召し替えを」
緑礼は焦ったような表情で、鳴鈴の腕をつかんで立ち上がらせる。
「お召し替え?」
「急がないと間に合いません」
「どういうことよ、緑礼」
飛龍の私室から出て廊下を歩くうち、王府の中が騒がしくなってきた。きょろきょろする鳴鈴に緑礼が振り返り、言った。
「星稜王殿下がお帰りになったのです」
鳴鈴はぱちぱちと瞬きをする。
「でも、予定ではあと二日はあるはずじゃ」
「予定よりだいぶ早く、お着きになったのです」
「う、う、嘘でしょ~っ!?」
事態を飲み込むと、鳴鈴は狼狽えた。
着飾るのは直前でいいやと思い、化粧もそこそこに侍女のような格好で掃除をしていた。
「早く早く、みんな助けて~っ」
叫ぶまでもなく、衣を持った侍女たちが鳴鈴の部屋に駆け込んできた。
超高速で着替えさせられた鳴鈴は、なんとか体裁を繕い、凱旋した星稜軍の前に立つことができたのだった。