恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

「ああ、可哀想な徐妃。そんなに必死にならずとも」

高らかに笑う楊太子妃の後ろから、ある人物が近づいてきた。鳴鈴は一歩下がり、宇春と共に深くお辞儀する。

二人の行動を不思議に思ったのか、太子妃は振り向く。そして、一瞬にして青ざめた。

「そんな意地悪を言うものではなくてよ」

近づいてきたのは、二人連れの女性だった。翠蝶徳妃と、武皇后だ。総勢二十名ほどの女官を従えている。言葉を発したのは皇后の方で、太子妃は滑るように後ずさり、二人にお辞儀をする。

「楊太子妃、あなたもまだまだ子供ね。どんな生活を望むかは人それぞれ。共寝しなくても幸せな夫婦はいるわ。あなたが知らないだけで」

皇后の言葉に反論する術はない。太子妃はうつむいたまま動かなかった。

「それにね、子供がいなくても私は幸せよ」

翠蝶徳妃が本当に幸せそうに言うので、太子妃はますます小さくなる。宇春が鳴鈴の肘をつつき、したり顔でニッと笑った。

「も、申し訳ございませんでした。失礼いたします」

太子妃は春風のように、ぴゅーっと駆けていく。あっという間に遠くへ行ってしまった。

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