恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「殿下、お妃さまを」
早く探さなければ。胸騒ぎが嫌な予感に変わっていく。
飛龍は緑礼と手分けして鳴鈴を探すことにした。
星稜王府と同じくらいの広さの庭を駆けまわる。行き違った女官に鳴鈴を見ていないか尋ねると、「そういえば牡丹の絹花をつけた女性が溜池の方に歩いていった」という。
庭の隅にある溜池は、庭中の草木の水やりに使うために作られたという。鑑賞用の美しい池ではないため、おかしいと思ったが、急ぐ用事があったので声をかけられなかったらしい。
飛龍は迷いなく、溜池の方へ駆けていった。城の敷地内にいくつもある宮殿を区切る背の高い壁が見えてくる。そうすると人気が全くなくなった。
「鳴鈴! どこにいる!?」
叫ぶが、返事は聞こえない。
やっと溜池が見えてきたと思ったら、そのほとりにぽつんと立つ鳴鈴の姿が。
悲しそうにうなだれる様子に、飛龍の胸はかき乱された。
悪いことをしてしまった。あんなこと、太子妃の前で言わなければよかった。適当に嘘をついておけば。
(鳴鈴に言ってやればよかった)
適当に濁すのではなく、牡丹の花神に扮した鳴鈴を、「綺麗だ」「可愛い」と。ちゃんと、褒めなければいけなかった。