恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
鳴鈴が説明すると、周りには殺人未遂事件もマヌケな日常のように聞こえる。
池に落ちる前のほんの一瞬、自分の衣の間から誰かの姿が見えたような気がするけど、混乱していたせいか、全く覚えていない。
「そうか。今緑礼が宮殿の警吏と一緒に下手人を探している」
ということは、ここはまだ皇城の宮殿内だ。自分を狙った下手人が近くにいるかもしれないと思うと、鳴鈴の気持ちは落ち着かなくなる。
「戻ってくるまでは俺がここにいる。心配せずに休め」
大きな手で頭を撫でられると、それだけで不安が消え、体中がぽかぽかと温まっていくような気がする。
鳴鈴はほんわりと温まる頬を隠したまま、ふるふると首を横に振った。
「下手人探しなんて、しなくていいです」
「しかし、そういうわけにはいかない。下手人はお前を、殺そうとした」
目を吊り上げて怒る飛龍は、鳴鈴の頭から手を放した。
「びっくりさせようと突き飛ばしたんじゃない。短剣で刺されたんだぞ。鏡を帯に入れていなければ、今頃は……」
「あっ、そうだ、あの鏡! せっかく殿下にいただいた鏡。あれは今どこですっ?」
がばりと飛び起きた鳴鈴に頭突きされそうになり、飛龍はのけぞった。