恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
皇帝や皇太子ならともかく、鳴鈴は第二皇子の妃だ。彼女を殺したとてなんの利益があるだろう。
「もしや、私が気づいていないだけで、とんでもない恨みを買ってしまったとか」
ぶるぶると青くなって震える鳴鈴を、飛龍は呆れ顔で見つめた。
「お前に限って、そんなことはないだろう」
「いいえ、わかりません。もしや、私の他に殿下をお慕いしていた娘さんがいらっしゃんじゃないでしょうか。だからあっさり妃になった私を恨んで……」
鳴鈴の脳裏にふと浮かんだのは、あの翡翠の耳飾り。
(もしや、殿下の恋人が、私を憎んで殺そうと?)
それくらいしか下手人の動機に思い当たる節はない。
口を押えて視線を外す。そうだとしたら、勢いだけで思いっきり言ってはいけないことを言ってしまった。鳴鈴はひとりで青くなる。
「それは、下手人を捕まえてみればわかることだ」
飛龍は否定も肯定もせず、ぽんぽんと鳴鈴の頭を軽く叩く。
「お前は余計なことは考えなくていい。このまま朝までゆっくり眠れ」
あまり考え込みすぎるのは体に毒だということだろうか。それとも無理やり話題を変えたかったのか。
飛龍の冷静な顔からは何も読み取れず、諦めた鳴鈴は黙ってうなずいた。