恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
(殿下が何を考えていらっしゃるのか、さっぱりわからない……)
自分を愛してくれているとしたら、そんなに嬉しいことはない。
ただ、「他に愛する人がいるから、これ以上妃はいらない」ということなら悲しい。
(宇春みたいになれたらいいのに)
殿下は私をどう思っているのですか? 他に好きな人がいるのですか?
宇春なら単刀直入に聞くだろう。
なんとも微妙な気持ちのまま、飛龍の背中を追いかける。すると、彼の右手がひらひらと動いた。
(ん?)
何の合図だろう。わからないまま黙っていると、飛龍が立ち止まった。右手はひらひら揺れる動きから、握ったり開いたりに変わる。
(もしや……)
鳴鈴はおずおずと自らの手を差し出した。そっと飛龍の指先に触れる。すると飛龍は罠にかかった獲物を捕らえるように、小さな手をぎゅっと包みこんだ。
「行くぞ」
「は、はいっ」
飛龍の手に引かれ、鳴鈴は回廊を歩き出した。
そうして飛龍と鳴鈴は宇春や皇太子、皇子たちに別れを告げ、皇城をあとにした。
帰りの馬車が一台増えた。それには皇帝から下賜された二十人分の衣装が作れそうな量の、美しい反物が積まれていた。