恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜

ひらりと地上に降り立った飛龍が手を差し伸べてくれる。

「おいで」

鳴鈴は彼の手につかまり、そろそろと馬車から降りる。近くには別の馬車に乗っていた緑礼もいた。

皇都の街に来るのは初めてではない。父と一緒に何度か遊びに来たことがある。

花朝節の余韻が残っている街には、いつも以上の活気があった。

どの商店の軒先も花で飾られ、春の景色を華やかに彩っている。

「にぎやかですね」

緑礼がにこやかに鳴鈴に話しかけた。

踊り子が舞い、笛や太鼓の音が空まで響く。芝居小屋の垂れ幕がひらひらと風に揺れ、中から観客の笑い声が聞こえてきた。

「あっちだ」

飛龍が指さした先に、餅(ピン)を焼いて売っている屋台があった。鳴鈴が反応するより早く、彼が手を引いてそちらに近づいていく。

「へい、いらっしゃ……」

餅を焼いていた屋台のオヤジが顔を上げて固まった。明らかに身なりのいい、しかも長身で眉目秀麗な男が自分を見つめていたからだろう。

「美味しそうですね」

「ええ、本当に」

緑礼の言葉に、鳴鈴は勢いよくうなずいた。


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