失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
「でも、今回のケースは正にそれ。彼女はとてもしっかりしていて、甘えたりできないタイプだったわ。顔立ちは普通だけれど、雰囲気からも安心させるオーラが感じられるし、あの男もそんな彼女に惹かれたのかもね」
けれど、そんな彼女を男は『可愛いげがない』と感じ、自分を頼り、甘えてくれる正反対の女に目移りした。婚約までしているのにだ。
「結果的にはよかったんじゃないですか? 依頼内容は婚約者の動きが可笑しいので身辺調査をしてほしいってことでしたけど、結婚する前に浮気がわかって」
あっけらかんと言い放った亜麻色の髪の女、セイレーンは、手早く依頼人へと届ける書類を書きまとめている。
そんなセイレーンの言葉をリリエラは複雑な心境で噛み締めていた。
「まぁ、次はちゃんと彼女のことを見てくれる相手に出会えるといいよね。でもさ……女だからって簡単に人に甘えたり頼ることができるなんて大間違いなのにね」
誰かに媚を売ったり、甘えることが上手だったり、要領が良かったり……そうやって生きている人を否定するつもりなどリリエラには毛頭ない。それどころか、それはそれである種の才能だとすら思っている。
けれど、我慢強いだけだったり、弱音を捌けないだけだったり、少し不器用な人を、可愛いげがないと一括りにしてしまうのはあまりにも悲しすぎる。
ただ必死に自分で立とうとすることに男も女もない、とリリエラは思うのだ。
きっと依頼人である彼女は元婚約者の見えないところで泣いているに違いない。
最後まで凛とした姿で男の前に立っていた彼女を思うとリリエラは心からこの結果を喜べなかった。