サーペンディス 天秤に架けられた少女
ご飯を食べた後、私達はまた庭に行って、水を撒いた。海から大分離れた太陽の輝きはますます増し、ホースから放たれた水は一粒一粒輝いていた。
「あ」
イーグレットが弧を描いた水を指差して、
「見てみそ」
見ると虹色の架け橋が出来ていた。
「虹だよ。太陽の光の屈折で出来る。魔法じゃない」
きれい。こんなものも出来るんだ。
「俺達は魔法が使える。でも、魔法が使えなきゃ人間と変わりはしないんだ。あ、寿命が長いのがあるか。やっぱ人間と俺達は違うか」
それからイーグレットは黙ってしまった。
何か考え込むような、抑えている表情。動くのも止め、だらんと垂れたホースから放たれた水が地面に水溜りを作る。
「―――イーグレット?」
虚ろな瞳から涙が一筋流れた。
「え、い、イーグレット?」
「―――ん?あ、あぁ、ごめん。なんか―――考え事してたんだ。ごめん」
涙を拭うと水を止め、
「んじゃ帰ろう」
そう言って促し、庭を出た。チラッと振り向くと彼の表情は濁っていた。