未完成のユメミヅキ
「和泉くんにね、バスケットボールのキーホルダーを作って欲しいって言われたの」

「え、そうなの?」

 タロちゃんは驚いて立ち止まった。そういえば、言っていなかったな。

「うん。タロちゃんが持っているやつだねって言っていたよ。作ってあげたら、俺もこれでがんばれるって」

「ああ……そうだったのか」

「バスケのことなのかなって思っていたんだけれど」

 スポーツバッグに揺れるキーホルダーを、タロちゃんは指で弾いた。

「バスケを辞めても、和泉くんががんばるなら応援したいけれど、迷惑かな……」

 ずっと友達だったわけでもなく、バスケをやっている人間でもない。
 それなのに、いちいち彼の人生に顔を出してよいのだろうかと思ってしまう。

「俺が、もしなにかの理由でバスケ辞めなくちゃいけなくなったら、目の前が真っ暗になるけどな」

 タロちゃんはそう言ってわたしの頭をポンポン叩く。


「そんなとき、応援してくれるひとがいるって幸せだと思うな」

「そ、そうかな」

「うん。いいなぁ、和泉は。まふに好かれて」

「す」

「好きなんだろーがよ」

 今更なに言ってんだよと、タロちゃんは笑った。

「じゃあ俺、行くわ」

「うん。がんばってね」

 なんか、タロちゃんも和泉くんも、お互い同じようなことを言うなぁ。

 モヤモヤして生命力を奪われる日だなと思っていのに、友達にひとこと励まされただけで気持ちがラクになるなんて、自分は単純だなぁと思う。でも、そんな風になれるのが友達というもので、不思議な力があるっていうことが分かる。

 和泉くんにとって、ちょっとでもそんな存在になれたらいいなと、思うんだ。



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