未完成のユメミヅキ

 ◇

 次の日、少し早めに家を出た。良く晴れた空を嬉しく思いながら、駅に向かう。そして、亜弥と待ち合わせの駅で電車を降りた。

 家と学校の最寄り駅以外で降りるとき、ちょっと緊張する。この緊張感は嫌いじゃない。たまにしか来ないから、見覚えがあるのに変わっていく感じも、好きだったりする。

 駅前はタクシーや一般車が乗り入れられるようにロータリーになっており、中心部はコインパークになっていた。それを囲むように小規模の商業ビルが立ち並ぶ。その中にはカフェや雑貨店、美容室などが入っているのだけれど、以前はなかったコンビニやドラッグストアが出来ていた。

 それらの新しい匂いを感じながら、時間になるまで駅のベンチで待った。

「ずいぶん早く来てたんだね」

 時間になって改札を通ってきた亜弥が笑う。
 薄いピンクのワンピースに黒髪がとても似合っていた。

 わたしは、白いカーディガンとお気に入りの黄色いプリーツスカート。亜弥のワンピース姿を見たら、自分も着たいなと思ってしまう。彼女とタイプが違うから似合わないのかもしれないけれど。

 ロースケーキ屋が掲載されていたフリーペーパーを持ってきたので、簡易地図も確認する。亜弥は携帯で調べた様子で、画面を見せてくれた。駅から徒歩15分とあるから、見渡した空間にはない。

「あんなところに居酒屋さんあったっけ」

「赤ちょうちん下がってるね。あれ、夜になったら点くのね」

 あちこち変わったところを発見しながら、駅前の横断歩道を渡る。

 駅前の道路は大きいのだけれど、ひとつの角を曲がって行くと住宅街だった。とても静かで、閑静な住宅街という言葉が思い浮かぶような場所。車の量もほとんど無い。
 しばらく歩くと『USAGI』という小さな看板が見え、ボードが出ていた。

「お店、ここだね」

 アイボリーを基調としたカントリー風の外観が女性に好かれそうな雰囲気を醸し出している。思わず「可愛いね」と微笑んでしまう。

「ドリンク&ロールケーキのセット500円、だって」

 亜弥が、可愛らしい文字で書かれたボードを読み上げる。
 カフェスペースがあり、ゆっくり食べることもできるとフリーペーパーの記事にあった。ケーキセットのお値段も良心的だと思う。高校生のお小遣いやバイト代で払える金額だ。

 窓から中を伺うと、買い物をしている主婦らしき客がいて女性店員がレジに居て、会計をしてる。
 カフェスペースに人はいないようだった。現在、お昼時でおやつやお茶の時間には少し早いのかもしれない。亜弥が躊躇せず店のドアを開けた。カランとベルが鳴る。


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