未完成のユメミヅキ
再び外を見ると、灰色の空がまだ雨を降らせている。いま傘を差さずに駅まで帰ったら、濡れてしまうし。
「ちょっと待ってて」
わたしは立ち上がり、レジにいる涼子さんのところへ行った。
「あの、すみません」
どうしたの? という風に涼子さんが首を傾げた。
「傘を貸していただけないでしょうか」
「ビニール傘で良ければ、ありますよ。少し小降りになったみたいだけれど、まだ止まないわね。帰るの?」
涼子さんが、窓の外をちょっと見て、レジ台の下から傘を掴んで出してきた。客用のものを用意しているのだろう。そこへ、和泉くんが奥から出てきた。
「帰るの? まだ雨降ってるけど」
「友達が、習いごとがあってもう帰らないといけないので。亜弥、傘を貸して貰えたよ」
そう亜弥に知らせると、席を立ってこちらへ来た。
「ありがとうございます。すみません。後日、お返ししますので」
「いいんですよ。持っていって」
「それと、麻文は残るので。帰るのはわたしだけ。まふはまだケーキ食べたいそうなんで」
「えっ、わたしも帰るよ。なんで」
なんで? わたしは意味が分からず亜弥に小声で抗議した。
「なに言ってるの。このあと予定無いんでしょ? いたらいいじゃん」
「そりゃそうだけど、迷惑でしょうが!」
小声で言い合うわたし達を涼子さんが不思議そうに見ている。すると亜弥がわたしの頭をポンポン叩き、和泉くんに向き直った。
「天田くん、まふのこと、置いていってもいい?」
「え? あ、うん……」
「ほら、いいってよ」
何を言うのだ。嘘だ。やめて。和泉くん、いま勢いで頷いただけだから。亜弥の剣幕に圧倒されただけだから。
そんな。ここにひとりにされるなんて……。焦るわたしを余所に、涼子さんは亜弥にビニール傘を渡す。
「亜弥さんを駅まで送ってあげられればいいんだけれど」
「傘だけでじゅうぶんです。さっきより弱まって小雨になっているし。いまのうちに」
「麻文ちゃんは、時間が許すならゆっくりしていって。この天気だとお店も静かだと思うから」
涼子さんはそう言ってくれた。和泉くんはどんな顔をしているのか、気になるけれど怖くて見られない。亜弥はテーブルに戻って帰り支度を始めた。わたしはそばへいって亜弥を肘でつつく。
「亜弥のおせっかい」
「本気で嫌そうな顔されたら空気読んで帰ればいいでしょ」
相変わらず乱暴である。
バイト中の和泉くんに関しては、話したいとかいうよりもただ見ていたいのかもしれない。そこは難しい乙女心。いや、おしゃべりできるならしたいけれど。
「ちょっと待ってて」
わたしは立ち上がり、レジにいる涼子さんのところへ行った。
「あの、すみません」
どうしたの? という風に涼子さんが首を傾げた。
「傘を貸していただけないでしょうか」
「ビニール傘で良ければ、ありますよ。少し小降りになったみたいだけれど、まだ止まないわね。帰るの?」
涼子さんが、窓の外をちょっと見て、レジ台の下から傘を掴んで出してきた。客用のものを用意しているのだろう。そこへ、和泉くんが奥から出てきた。
「帰るの? まだ雨降ってるけど」
「友達が、習いごとがあってもう帰らないといけないので。亜弥、傘を貸して貰えたよ」
そう亜弥に知らせると、席を立ってこちらへ来た。
「ありがとうございます。すみません。後日、お返ししますので」
「いいんですよ。持っていって」
「それと、麻文は残るので。帰るのはわたしだけ。まふはまだケーキ食べたいそうなんで」
「えっ、わたしも帰るよ。なんで」
なんで? わたしは意味が分からず亜弥に小声で抗議した。
「なに言ってるの。このあと予定無いんでしょ? いたらいいじゃん」
「そりゃそうだけど、迷惑でしょうが!」
小声で言い合うわたし達を涼子さんが不思議そうに見ている。すると亜弥がわたしの頭をポンポン叩き、和泉くんに向き直った。
「天田くん、まふのこと、置いていってもいい?」
「え? あ、うん……」
「ほら、いいってよ」
何を言うのだ。嘘だ。やめて。和泉くん、いま勢いで頷いただけだから。亜弥の剣幕に圧倒されただけだから。
そんな。ここにひとりにされるなんて……。焦るわたしを余所に、涼子さんは亜弥にビニール傘を渡す。
「亜弥さんを駅まで送ってあげられればいいんだけれど」
「傘だけでじゅうぶんです。さっきより弱まって小雨になっているし。いまのうちに」
「麻文ちゃんは、時間が許すならゆっくりしていって。この天気だとお店も静かだと思うから」
涼子さんはそう言ってくれた。和泉くんはどんな顔をしているのか、気になるけれど怖くて見られない。亜弥はテーブルに戻って帰り支度を始めた。わたしはそばへいって亜弥を肘でつつく。
「亜弥のおせっかい」
「本気で嫌そうな顔されたら空気読んで帰ればいいでしょ」
相変わらず乱暴である。
バイト中の和泉くんに関しては、話したいとかいうよりもただ見ていたいのかもしれない。そこは難しい乙女心。いや、おしゃべりできるならしたいけれど。