未完成のユメミヅキ
「タロ、ごめん。ちょっとまふちゃん借りてた。なんもしてないから」

「頭、触ってただろ」

「あっちょっと、ゴミ取っただけだから」

 ゴミなんてついていたのかな。わたしは自分の頭を触った。そして首を傾げる。

 和泉くん、なんか変なことばかり言うなぁ。

「いやいや、ていうか、お前この間もまふを借りるとかおかしなこと言うよな。どういう意味だよ」

 ほら、やっぱり。

「どういう意味よ」

 タロちゃんと亜弥が和泉くんに詰め寄る。なんだろうこの状況は。和泉くんは驚いて目を見開いている。

「え? だって、タロはまふちゃんのことを、その」

 なにを言っているの。思わずあんぐりと口を開けてしまった。和泉くんは最後まで口にしなかったけれど、その続きに気付いたのは、亜弥。

「は? そうなの?」

 低い声で言う、黒髪の美少女の亜弥が誰よりも恐ろしい。ゆっくりと振り向き、タロちゃんを睨んで凄んだ。

「俺が? まふを? なんでそうなるんだよ。和泉ぃ! お前、変なこと言うなよ!」

「だ、だって、キーホルダーをずっと大事にしているし、作って貰ったんだって嬉しそうに言うし!」

「中学の友達に作って貰ったって言っただけで、麻文に作って貰ったとは言ってない!」

「言ってたじゃねーかよ」

「は? いつ言ったよ。確かに最初のやつはまふが作ってくれたけど、でもすぐ壊れて、亜弥が作り直してくれたんだよ」

 タロちゃんは地面に置いたスポーツバッグに付いているキーホルダーを指さす。

「そうよ。これ作ったのはわたしよ、わたし!」

 亜弥が和泉くんに詰め寄る。和泉くんが後ずさった。

「手解きしたのはわたしだけどね!」

 わたしは割って入った。なんだか蚊帳の外で寂しかったからだ。口を尖らせていたら和泉くんが吹き出した。なんかむかつく。

「その勘違いなんなんだよ。和泉、お前だってまふにキーホルダー作ってもらったじゃねーか」

「そ、それは」

「そうか、そういうことか。和泉、お前は俺にやきもち焼いたんだな! だから作って貰ったりしたんだな!」

 タロちゃんがニヤニヤしながら和泉くんに詰め寄る。

 は? ちょっとどういうこと?

「ん、な、変なこと言うなよ! 元はといえば、お前が」

「いやいや。誤魔化すな。そういうことなんだな!」

 たじろぐ和泉くんに更に詰め寄るタロちゃん。今度はここか。

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