一匹狼くん、拾いました。
親父を殺すね……。
風のうわさで血流は犯罪に手を染めてるって聞いたことがあるが、どうやら本当にそうみたいだな。
「……断る」
俺は緋也を睨みつけた。
「まあまあそんなこといわずにさあ……親父さんが憎いんでしょう?殺してあげるから」
「そんなことはしなくていい」
俺は緋也から顔を背けた。
「俊平、本当にそう思っているのか?
本当は俺が憎くて、今すぐ殺したくて仕方がないんだろう?」
俺の胸倉を掴み上げ、緋也はあたかも親父になりすましたかのような口ぶりで言った。
「……そうだな。憎くないと思った日なんてねえよ。でも、本当に殺したいと思ったことも一度もねえ。だって父親だからな。
……俺はただ、あの親父にたったの一度でいいから、商品としてではなく実の息子として名前を呼ばれたい。十年前のように、愛してるって言われて、可愛がられたいだけだ」
空を見上げ、俺は自分の想いを確かめるかのように言った。