隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜


晶帆の事は何でも知っているつもりでいたが、結局彼女の事を何1つ知らないのだと痛感した。

平日しか会わなかったのは、暴走しないようにする為で彼女のアパートから帰っていたのも同じ理由。




そして自分の部屋に呼んだ事がないのも。


彼女のタイプの男を演じるのは、簡単な事じゃない。

長い時間、彼女の側にいると化けの皮が剥がれそうなってしまう。





冷静でなんて居られない。

穏やかになんてなれない。

優しい男を演じられない。




本来の自分は、晶帆に似合う男じゃない。

真っ白な晶帆と正反対の人間。




真っ黒で汚れきっていて、自分の目的の為なら何だって利用するような汚い人間だ。



そんな自分を晶帆にだけは知られたくない。




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