隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
大荷物を抱えた老婆に優しい笑顔で手を差し伸べて居た天使のような彼女に、柄にもなく一瞬で恋に落ちた。
最近は服を作ることの方が楽しくて大分遠のいていた恋愛。
久しぶりのフワフワとした気持ちに、本業の活動意欲も増した。
彼女を思い浮かべながら、デザイン画を描く事に没頭した。
そしてウキウキしながら久しぶりに訪れたジャパンライフ生命の受付に立つ彼女は何故か憔悴しきっていて、まるで別人のようだった。
彼女に群がる男達、そしてそれを冷たい視線で眺める女達を目にして彼女の置かれた状況を理解した。
彼女に恋したのは自分だけじゃない。
自分もその大勢の中の1人。
そして女は自分より目立つ同性の存在が気に入らない生き物だ。
この格好(女装)をしている時に、それは痛いほど痛感した。