隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
彼女の顔から手を離し、拳を握った。
「失うのを恐れて躊躇する気持ちが今なら分かるよ。そんなに大事なら早く帰ってきて取り戻しに来いよ。、、圭。」
呟いた独り言は咄嗟にボリュームを上げた音楽でかき消した。
隣を確認すると彼女が身をよじる。
もう一度ボリュームを下げて彼女のブランケットを肩まで掛け直した。
スヤスヤと眠る彼女の横顔をもう一度だけ見てから、ハンドルを強めに握りしめ家路へと向かった。