隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
少し強めに体を揺さぶると、薄っすら目を開けて鍵をポケットから取り出すとふにゃりと笑った。
「圭くんっ、、、?今日もお仕事お疲れ様。ご飯、作っておくから先にお風呂入ってきていいよ。」
寝ぼけているようで私と津川さんと間違えているのか夢でも見ているのかは分からなかったが、、それはそれは幸せそうに笑った。
晶帆にとっての津川さんの存在の大きさに改めて気づかされて胸が締め付けられる。
鍵を受け取り、中へと入る。
急いでベットのある寝室まで晶帆を支えながら連れて行き、ゆっくりと横にした。
布団を肩までしっかり掛けて眠る晶帆を暫く見つめてから静かに寝室を出た。
タクシーで自宅に戻っても良かったが、晶帆を独りにするのが心配で今日はこのまま晶帆のアパートに泊まることにした。
寝る前にせめて顔だけでも洗おうと洗面台へ向かうとハンガーに掛けてある男性モノのシャツが目に止まった。
同棲している訳じゃない為、歯ブラシなどは晶帆のモノしか無かったがよくよく部屋を見渡すと男性モノの衣類があちらこちらに置かれていた。
一度も泊まって言ったことがないと、以前悲しそうに笑う晶帆を思い出した。
あの時は津川さんの取る行動の意味が分からなかったが、今なら少しだけ分かる気がする。
ホンモノじゃないから踏み込めなくて、、、でも何処かに自分の存在を残したくて、、鈍感な晶帆にはその意味が分からなかったのかもしれないが部屋のあちらこちらに津川さんの存在を感じる。
それが意図的に置かれた男性モノの衣類。
2人が惹かれ合い想いあっているのは明らかなのに、恋愛であまりいい思い出がない2人にとってはきっとこれが初恋なのだろう。
津川さんの為にと取った晶帆の行動が吉と出るか凶と出るかは分からないが、ようやく動き出した歯車。
一度動き出してしまった歯車はもう止まらないし、誰にも止める事はできない。
だからどんな結果になっても、晶帆を1番近くで支え続けようと心に決めてリビングのソファーに横になって目を閉じた。
人生の中でこんなに感情を露わにしたのは生まれて初めてで、それのお陰か目を閉じると直ぐに眠りについたのだった。