隠れ蓑〜偽り恋人・真実の愛〜
止めようと必死に歯を食いしばっても、溢れる涙。
光さんというホンモノの婚約者がいるのに、他の男性の事を想って涙が出てしまう自分に嫌悪感さえ感じた。
それに今は業務中。
何がなんでも涙を止めなくてはいけない。
光さんから貰っていた右の薬指にハマった指輪を左手にはめ直した。
そして顔を思いっきり叩く。
その激しい音に隣の真美ちゃんがビックリしたようにこちらを見た。
「先輩、、何してるんですか。」
「最近ドライアイが酷くてね?それに昨日は録画してたドラマを一気に見ちゃって寝不足なの。だからかな、欠伸が止まらないくて。本当、、ごめんね?ようやく目が覚めたからちゃんと業務に勤めるね。」
そう言って真美ちゃんに笑顔を向けると、戸惑った表情をした真美ちゃんが何か言いたそうにしている。
「っ、、先輩、、その左手の薬指は、、なんですか?一体、、誰から、、?」
ワザと左手を見せながら、戯けて見せた。
「、、うん、これね光さんから貰ったの。実は真美ちゃんには言うのが遅くなっちゃったけど、私ね、、、今月いっぱいで退社するの。寿退社ってやつかな?だからこんな駄目駄目な私だけと、あと少しだけ、、、宜しくね?」
「寿退社って、、!glitterの社長とですか?!じゃあ、先輩が二股してたって本当だったんですかっ、、!?!?」