硝子の花片
「…それはそうだが…間者っていう可能性も捨て切れねえな。」

土方さんは眉間に皺を寄せて再び私を見た。
綺麗な二重まぶたで、瞳はどこか、この人の弱さと強さを表しているような、不思議な瞳だ。

あまりにも顔面偏差値が高すぎるので私は話を聞くどころではなかった…

「え、間者なんですか?桜夜さん。」

ふと沖田さんが私の顔を覗いてきた。
そのきょとんとした表情は子供っぽくて可愛らしいと思った。でも、その目は私の心を覗こうとしているかのように鋭かった。

ホントのことを言わないと…。沖田さんに怪しまれたら頼る人がいない…!

「あーえっと、そもそも間者(かんじゃ)ってなんですか?」

その場に沈黙が訪れた。

すると土方さんは笑い始めた。沖田さんもくすくすと笑いを零した。

「桜夜さん。間者っていうのは隠れて敵の動向を探ったりする諜報活動をしている人の事ですよ。」

沖田さんがくすくすと笑いながらも丁寧に答えてくれた。

「まさか間者を知らないなんてな…くくくっ…未来人も大したもんだぜ…」

「何がおかしいのか理解できませんが、取り敢えず土方さん笑い過ぎです。」

あまりに土方さんが笑うものだからムキになってしまった。

「ああ、すまねぇ。…一応近藤局長にも相談してくる。それまで総司の部屋で待ってろ。」
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