硝子の花片

徒桜と雨

その後、私は近藤勇局長に会った。

逞しい感じだが、笑った時の雰囲気が優しく、性格も穏やかな人だった。

「君が桜夜さんか。未来から来たなんて、さぞかし大変だったろう。居場所ならここを使ってくれ。そうだな…総司の部屋が良いだろう。こいつは女子に興味が無い奴だからな、それに腕も立つから守ってくれるだろう」

そう言ってふわっと緊張を解くような笑みを見せた。

「ちょっといいか。ここは荒くれ者も沢山いる。基本女子禁制だから男装しておけ。いいな。総司、頼んだ。」

「了解しました」

土方さんも私がここで安全に過ごせるよう、策を考えてくれていたみたいだ。なんだか疲労の色が見えた。

「あの、ありがとうございます!」

知らない場所でこんなに良くしてもらうなんて申し訳ないのもあるが、何より嬉しかった。

「…礼には及ばねぇ。」

少しふてくされたような顔で土方さんは言った。

「そうだよ。困っている人を助けるのは人として当たり前の行為だ。何かあったら言ってくれよな。」

土方さんとは反対に白い歯を見せて輝く笑顔で近藤さんは言った。

その時だった。

ドタドタと廊下の方から騒がしい足音がした。

そして足音は私達の居る近藤さんの部屋の前で止まった。

スパァーンッ

次の瞬間、勢いよく障子が開け放たれた。

「こら、ものは大切にしなさい!桜夜さんが驚いてるじゃないか。」

親が子に言うように近藤さんが言った。

「あ、ごめんね?」

そう言ってわたしの顔を済まなそうに見たのは私とも同い歳くらいの少し茶目っ気を感じる男の子だった。

「俺、藤堂平助!19歳!総司と同い歳ね。未来から来たっていう子が気になってきてみたんだけど…もしかして君?」

そう言って藤堂さんは首を傾げた。
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