硝子の花片
「っあっ、ああ。すみません…。藤堂さんがそんな事を…。あー、なんだかみんな大人になっていっちゃう…。」

沖田さんはショックなようだ。「藤堂さんだけはそーゆーのに疎い仲間だと思ってたのに」だそうだ。

「…桜夜さんも、恋してるんですね。年頃の女の子ですもんねっ!」

私にはそんな実感が無いので、そう言われても恥ずかしいだけなのだが。
沖田さんはどこか無理に笑ってるようだった。

「…実感が無いから悩んでるんですよ…?分かってます…?」

私は訂正した。私が恋してるだなんて、私にも分からないのに。

「…私にはその感覚すらわかりませんが、自分の気持ちに素直に生きなきゃ駄目ですよ?私達は徒桜のようなものなんですから。」

そう言って沖田さんは儚げに笑った。
(平助くんと同じ事を言うの?沖田さん。)

なんだかその言葉が、新撰組の最期を語っているようで悲しくなった。

生きてるうちに、そんな事言わないで欲しかった。
だから私は話を逸らした。

「沖田さんは誰に手紙書いてるんですか?」

沖田さんは手紙のことを忘れていたのか、あっ!という何とも間抜けな声を上げて文机に向き直った。

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