硝子の花片
「江戸で暮らしている姉に手紙を出すんです。」

そう言った沖田さんの横顔は穏やかだった。

「ミツさん…ですか?」

「あれ?藤堂さんから聞きました?
そうです。ミツ姉は長姉でキン姉は次姉です。今はミツ姉からの手紙の返事を書いてるんですけど…新撰組であった出来事とか教えてって…何かあります?」

沖田さんは困ったように笑った。
お姉さんの事が好きなんだなあ、と思わせる表情だ。

「…私、沖田さんが巡察の時に見ちゃったんですけど、土方副長がこっそり俳句書いていたこととか?」

「っ!?知ってるんですか桜夜さん!?〈豊玉〉さんの俳句を!!」

沖田さんはいきなり大声を上げた。
そんなに凄いことなのだろうか?え、豊玉って?

沖田さんが言うには、
土方副長の俳号→豊玉(ほうぎょく)
俳句→梅の花 一輪咲いても 梅は梅
沖田さんの評価→下手すぎる(失礼)

という事だった。

これ以上話すと土方副長が可哀想だったので深入りする事は辞めた。


「…あ、そういえば、桜夜さんが来たことをお知らせしてませんでした。」

そう言うと沖田さんは筆を進めた。

「…私の事書くんですか…?」

「ええ、だって相部屋ですし、出来事思いつかなかったし」

それは理由になるのだろうか…?





< 37 / 105 >

この作品をシェア

pagetop