暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
私も同じく今起こった現状にかなり戸惑っている。
「じゃあ………本当に私のお兄さんなのね?」
確かめるようにそう言葉を発すると兄だと言う目の前の男性は「……あぁ」と私の目を真剣に見ながらそう返事を返した。
この目は嘘をついている目ではない。
本当の話だ………………。
「…………お兄ちゃん………………っ!!」
思わず前の兄に抱きつくと兄は何も言わず、優しく私の頭を撫でてくれた。
見た目は変わっても性格は昔のままで、
今までずっと孤独だったからか、緊張の糸が解けるように私は急に泣きだしてしまった。
「………ぐすっ………はぁ………。お見苦しいところをお見せ致しました」
感情が収まると涙を拭き取りあえず周りの方に謝罪すると、宰相様がそれに対し口を開いた。
「陛下も特に気にしていないご様子なので、こちらとしては別に構わない。しかしなぜあのドアの前に立っていたのか知りたがっている者がこの中にはいる。まずは説明をしてくれ」
「本当にフィグリネ様からそこに居るよう命じられたのですか?」
それに続き案内係の侍女がそう私に問いかけた。
私がここにいた理由…………………………それは、約束を守っていただく為。
母国に………家族の元に帰りたい。
ただそれだけの為に私は言うことを聞いてきた。
けれど兄と再会したのであれば、もう関係ないかしら…………。
それよりも私が隠している事実は重要かつ恐ろしい事。
直ぐさま伝えなくては……っ!!
「それについてはお願いでございます!!!どうか……………あの二人をお助け下さいませ!!!」
私は震える声で皆の前に土下座をした。
そして事の経緯を簡単に説明する。
「……………その無実の罪で捕らえられているのは侍女のアニ・テリジェフと言う者と、その者が始め仕えていた主、第8妻のユリノーゼ・スフィア・ガルゴ様と言う方でございます」
「アニ…………テリジェフ…っ!?」
「ご存知なのでございますかっ!?」
その名に反応したのは宰相様の隣に立っている顔の整った綺麗な男性で、服装的にこの方がアンディード帝国の王なのだろう。
しかし、アンディード帝国の王が…………なぜその名に反応を………?
「はぁ……………。まさかとは思ったがまた厄介事に首を突っ込んだのか………」
頭を抱えるとそう言ってため息をつく。
「その者はどこに?」
「は……はい!!このドアの奥であります地下牢になります」
私的にはまずスフィア様をお助けして欲しいのだけど…………。
「そこの兵士!!」
「「「「「「………………はっ!!!!!」」」」」」
「余の後に続け。まずはアニ・テリジェフとやらを助ける」
先ずは近くにいる者から助けるご様子。
しかし………両方が助かるのであれば、順番がどうあれどちらでも良いのだが……………。